おそらく6月21日(月)が第一報だったと思いますが、BBCやCNNのネットニュースにて、概略以下のようなコガタペンギンに関する情報(英語版)が流れました。
オーストラリアのタスマニア州マリア島に放されたタスマニアデビルによって多数のコガタペンギンが死亡した
6月25日(金)には、その日本語版がネットニュースとして流れたと思います。
基本的背景としては下記の3点(①~③)がポイントです。
- 2010年代から、オーストラリア固有の有袋類=タスマニアデビルに伝染性の顔面腫瘍が広まり、この動物に絶滅の危機が迫っていた。
- これを受け、オーストラリア政府とタスマニア州政府は「タスマニアデビル保護プロジェクト」を展開し、その一環としてタスマニア島東岸のマリア島に、2012~2013年にかけて28頭のタスマニアデビルを放して「避難」させた。
- マリア島に導入されたタスマニアデビルは、2016年までに100頭ほどに個体数が増加した。反面、元々この島で繁殖していたミズナギドリやコガタペンギンなどの鳥の個体数が激減し、特にコガタペンギンは「3000つがい」のほとんどが姿を消した。
この一連の経緯についてコメントし警鐘を鳴らしているのは、「バードライフ・タスマニア」のエリック・ウェーラー博士。「オーストラリアのペンギンは、常に人間が持ち込んだペットや家畜による被害や圧力にさらされてきた」とウェーラー博士は説明します。しかも、タスマニアデビルがマリア島に導入される前から、各種保護団体や研究者は、すでに島にいる野生動物たちへのリスクを指摘していたのです。
実は、ウェーラー博士はタスマニア大学所属の著名な鳥類学者、ペンギン研究者でもあります。ペンギンの保全生物学においては、世界の研究者のリーダー的存在。「地中に巣穴を掘って繁殖するコガタペンギンやミズナギドリは、掘ることを苦にしないタスマニアデビルにとっては格好の獲物だ」という博士の指摘は、まさに長年の経験から出てきたものなのです。
さて、このような状況や専門家の意見を、今後、オーストラリア政府とタスマニア州政府とがどのように受けとめ、マリア島の鳥たちと「人間によって導入されたタスマニアデビル」たちに対応していくのか?野生動物の保全を考える上で、重要な具体例の1つとして注目していきましょう。
・・・ちなみに、「6月25日(金)のCNNネットニュース日本語版」の訂正を1つ。コガタペンギンの被害は「3000羽」ではなく「3000つがい=6000羽」です。これは決して少なくない個体数です。