ウルグアイでのマゼランペンギンの大量死報道について
~現地救護団体からの最新情報~
2023年7月22日(土)以降、
AFPなどの各種報道機関を通じて
「南米ウルグアイの大西洋海岸に多数のマゼランペンギンの死体が漂着している」
というニュースが現地の映像などを交えて報じられています。
それによれば、
ウルグアイ環境省高官の話として
「2000羽以上のマゼランペンギンの死体が漂着している」とのことです。
また、同国の自然保護区の一つ、Laguna de Rocha では、
大西洋岸およそ10キロメートルの間に
500ほどの死体が漂着したという情報もあります。
これら一連の報道の根拠の一つとなっているのが、
同国で長く海洋生物と自然環境保全活動を続けている
Richard Tesore さんからの貴重な情報です。
リチャードさんは、
NGO SOS Marine Wildlife Rescue の代表として、
1970年代後半から
ペンギンなどの海鳥や海獣類の救護活動を続けてこられました。
上田は、リチャードさんの救護施設を訪問し、
ペンギンの救護活動をお手伝いしたり、活動資金を支援したりしてきました。
![](https://penguin.ikimonoacademy.com/wp-content/uploads/2023/07/IMG_7315-1024x684.jpeg)
リチャードさんは、今回の大量死について、
各種報道機関からの問合せに答えて、
概略次のような背景を説明しています。
「今回漂着したマゼランペンギンのほとんどは巣立ち直後の若い個体であり、
その90%が餓死だと思われる。
死体の胃はほとんど空であり、
なんらかの理由で魚などの餌生物を十分採れなかったことが原因だろう。
鳥インフルエンザについても確認したが、全て陰性だった。」
「マゼランペンギンの若い個体が餓死して漂着するという現象は
1990~2000年代以降目立ってきており、
海流の変化、海水面温度の上昇、餌生物である魚などの人間による乱獲が
その原因だと考えられる。」
マゼランペンギンのヒナは、
巣立ち直後から数年間、北はブラジル、
南はウルグアイ~アルゼンチンの大西洋沖を回遊して成長していきます。
この間、南米の大西洋岸のどこかに上陸する個体もいますが、
基本的にはずっと海上で生活すると考えられています。
この数年間、海に餌生物が豊富に存在し、嵐などに遭遇しなければ、
今回のような大量死や漂着は起きないと考えられます。
ところが、1990年代以降、数百~数千、
時には一万羽を超えるマゼランペンギンの若鳥が、
衰弱したり死亡した状態で、
南米大西洋岸(南半球)に漂着するという現象が度々起きているのです。
これ以外にも、
沖を通過する貨物船などから不法投棄された燃料用重油を浴びたり、
毒性のあるプランクトンを食べた魚を食べて死亡したり、
漁網に絡まって溺死したりということも度々起きています。
例えば、2010年には大規模な重油汚染事故が、
2012年には衰弱した若鳥の大量漂着が起きています。
リチャードさんからの最新情報によれば・・・
「マゼランペンギンの漂着死体数は、
7月31日現在、累計5000を超え、
衰弱した18羽をリチャードさんの救護施設で体力回復させており、
これとは別に4羽の重油汚染されたマゼランペンギンを救護・治療している」
とのことです。
マゼランペンギンの漂着死体数は、今後さらに増加する可能性があります。
今後の推移を、リチャードさんと緊密に連絡をとりながら、
注意深く見守っていきたいと考えております。
なお、スペイン語が中心ですが、
リチャードさんのFacebookは以下の通りですので、ご確認下さい。
https://www.facebook.com/sos.faunamarina
今後の展開によっては、皆様にご支援をお願いすることがあるかもしれません。
引き続き何卒よろしくお願い申し上げます。