第11回国際ペンギン会議(IPC XI)報告 【その3】

 

今回は少し重たい話題です。

 

IPC XI の参加者を国別に眺めてみると、

一つの大きな傾向に気づきます。

 

7日間の日程で確認できた実際の参加者の国籍は以下の通りです。

 

南北アメリカ :

チリ、ペルー、エクアドル、アルゼンチン、ウルグアイ、

ブラジル、メキシコ、アメリカ合衆国、カナダ : 9ヵ国

 

オセアニア : 

オーストラリア、ニュージーランド : 2ヵ国

 

アフリカ :

南アフリカ、ナミビア : 2ヵ国

 

ヨーロッパ :

イギリス、フランス、ドイツ、

オランダ、スペイン、フィンランド : 6ヵ国

 

アジア : 

日本 : 1ヵ国

 

◇合計 : 20ヵ国

 

ひょっとしたら、

私が気づいていない他の国籍の参加者がいたかもしれません。

 

ただし、IPC XI 事務局にも確認致しましたので、

この内容に大きな誤りはないと考えます。

 

さて、冒頭に指摘した「参加者の国籍の大きな傾向」とは、次の2点です。

 

① 南極基地は別として、

 南半球のペンギン生息地を領有している国は全て揃っている。

アジアからは日本しか参加していない。

 

 

報告【その2】でご説明しました通り、

IPC は「ペンギン保全と研究活動の効果的調整を推進すること」

を大きな目的としています。

従って、ペンギンの野生個体群をその領土・領海内に保有している国々の参加者が

全て揃っているということは、大変重要なポイントです。

各々の国の動静や情報を細かく新鮮な状態で知ることができるからです。

 

一方、アジアからは日本しか参加していないという現実は、

何を意味するのでしょうか?

 

以下のような課題が考えられると思います。

 

南極に基地を持ち、科学的研究を行っているアジア諸国は少なくありません。

そういうアジア諸国の研究者間の交流や協力態勢、

ペンギンの野生個体群に必要以上のストレスを与えないための協調態勢は

整っているのでしょうか?

 

アジア諸国では、最近30年間、

ペンギンを飼育・展示する動物園や水族館等の施設が急増し、

そこで飼育されている「飼育下個体群・飼育下個体数」も急増しています。

しかし、日本以外のアジア諸国では、飼育下個体群に関する網羅的かつ詳細で

正確な統計的データはほとんど整備・公開されていません。

 

①・②の状況がどのような事情によるものか?を確認し、

改善していく必要があると思われます。

その理由は、次の通りです。

 

[ア]

IPCの活動目的をより徹底し、

ペンギンの研究や保全活動を推進していくためには、

より多くの国々や地域の関係者が交流する必要があります。

特に、最近数十年間で経済的・社会的に発展し、

国際的な影響力を増して

ペンギン研究や保全活動にも少なからぬ関わりを持つようになった

アジア諸国からの参加者を増やすことは、

大きな意味を持っています。

 

[イ]

残念ながら、最近、南アフリカやそれ以外の

いくつかの南半球にあるペンギン生息域内(海域内)で、

アジアからの漁船団によるペンギンの餌生物の乱獲や混獲が増加している

との報告が急増しています。

また、ケープペンギン(アフリカンペンギン)やキタイワトビペンギンの

密猟や密売が増えているという報告もあります。

 

[ウ]

イで密猟・密売された個体の一部は、

どうやら転売され、いわゆる「ロンダリング」されて、

ヨーロッパやアジア諸国のペンギン飼育施設に流されているとの情報もあります。

 

IPC XI の公式日程の5日目・9月8日(金)、

IPC XI 事務局から「マスコミに対して次のような発表をした」という

アナウンスがありました。

チリ北部でのフンボルトペンギンの減少が著しいこと。

 

南アフリカやナミビアにおいて、漁業活動の拡大に伴い、

ケープペンギン(アフリカンペンギン)の個体数減少が著しいこと。

 

ニュージーランドにおけるキガシラペンギンの減少傾向が止まらないこと。

 

南米南部においてキングペンギンの繁殖地拡大、あるいは再定着が見られること。

 

この内、特に②については、

南アフリカやナミビアからの参加者から、

何回も重ねて「深刻な状況」に関するお話を伺いました。

 

 

つまり、今回のIPC XI 参加者の国籍から見えてくる

大切なポイントは以下の通りです。

 

アジア以外の地域では、

ペンギンの研究や保全の在り方について関心を持ち、

国際的協調を推進していくことに積極的な専門家が一定数いること。

 

②一方、アジアでは、ペンギンの飼育施設が急増し、

飼育下個体群や飼育下個体数が急増しているにも拘わらず、

他の地域のように、ペンギンの研究や保全に高い関心を示し、

積極的にこれを推進・展開していこうとする国や個人が(日本を除き)、

極めて少ないこと。

 

③ ②のような傾向が今後も続くとすれば、

アジアは、残念ながら「ペンギンの野生個体群の消費地域」になっていると言われても、

反論の余地がない状況になりかねないこと。


今回の話題や課題については、これからも注目し、

その後の経過を継続的にご報告して参ります。

 

アジアには、ペンギンを愛し関心を持っている方々が大勢いらっしゃるはずです。

そのような「Penguin People 」を

一人でも多く見出だしていきたいと考えております。

 

次回【その4】では、

IPC XI で提示された最新の話題についてご報告致します。

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