世界はいま、コロナパンデミック第2(あるいは第3)波の衝撃と、アメリカ合衆国大統領選挙結果の行方に注目しています。これらはともに、世界の未来に大きな影響を与える重大な出来事です。今後もしっかり見まもっていく必要があります。

一方、11月4日(水)、イギリス南極研究所(BAS)がAFPを通じて発信した情報については、ほとんど注目が集まっていないようです。AFPの記事やその後の各種情報については、「巨大氷山 サウスジョージア島」で検索すれば、詳細を確認できますのでご覧下さい。
簡単にまとめると・・・「南極から流れ出した巨大な氷山が、1ヶ月以内に、海洋生物の重要な繁殖地であるサウスジョージア島に座礁し、壊滅的な影響を与える可能性がある」というものです。ここでは、主にペンギンへの影響という視点から、この出来事の意味について考えてみましょう。

まず、問題の氷山ですが・・・「A68a」という呼び名がついています。11月4日時点では「160km × 48km」、表面積 約4200k㎡の大きさでした。ちなみに、東京都の面積は 2194k㎡ですから、「A68a」は東京都の2倍弱の広さがあることになります。また、この氷山が接近しているサウスジョージア島の総面積は 3903k㎡ ですから、もしこのまま「A68a」がサウスジョージア島に座礁すると、島の表面積は一気に倍増するわけです。

問題の1つは、この「A68a」の「生いたち(由来)」です。この巨大氷山は、もともと西南極=ウェッデル海に面した南極半島の東側に張り出した「ラーセン棚氷」の一部が分裂してできました。当初の表面積は 5700k㎡。なんと 2017年! 3年も前のことです。当時は「世界最大級の超巨大氷山」として、世界中に報道されました。それから3年。この氷山は、南極半島周辺に一時漂着したり分裂したりしながら、形を変え、いま「A68a」としてサウスジョージア島に迫ってきたのです。
実は、南極大陸の周辺はぐるっと全て海です。一般には「南極海」と呼ばれています。地球儀や地図帳があれば確かめてみて下さい。そして、この南極海には、南極を中心に「時計回り」の強い海流=「周極流」が流れています。「A68a」は、その海流にのって北東方向に流されていくと考えられているのです。
さらに悪いことに、「A68a」の厚さは200mほどしかないといわれています。つまり、この巨大氷山は、サウスジョージア島周辺の浅い海域で座礁する可能性が高いのです。氷山が厚ければ、島のはるか沖合いを通過するだけですむかもしれません。しかし、細長い氷山の形からみて、サウスジョージア島の南岸に座礁すると、同じく細長い島の形とぴったり重なりあってしまうということも考えられます。
サウスジョージア島では、キングペンギン、マカロニペンギン、ジェンツーペンギン、ヒゲペンギンの4種が繁殖しています。最近の調査によれば、キングは約90万羽(増加中)、マカロニは約200万羽(減少中)、ジェンツーは約2万羽(減少中)、ヒゲは約3600羽(増加中)いると考えられています。ちなみに、この数字は、いずれも繁殖可能な成鳥の個体数です。

ご存知の通り、これから南半球は春から夏をむかえ、多くの動物たちが繁殖期に入ります。サウスジョージア島のペンギンたちも例外ではありません。この島で子育てをしようとしている親鳥たちに、巨大氷山が、静かに接近しているのです。もし、今後1ヶ月以内に、サウスジョージア島に巨大氷山が座礁したとすれば、ペンギンたちの繁殖は壊滅的な打撃を受ける可能性が大です。親鳥たちは、このシーズンの繁殖を諦めることによって、なんとかその難を避けられるかもしれません。しかし、この氷山が、今後何年間か居座り続けた場合、その間ずっとペンギンたちは子育てができないことになります。その影響は、はかりしれません。

今はただ、「A68a」のルートがそれてくれることを祈るばかりです。そして、巨大氷山の物語から、私たちが、より多くの教訓を引き出せるよう、この出来事にもっと目を配っていく必要があると痛感しています。

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